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海外研究室便り No.10

 私は、2011年春からMaryland州BaltimoreにあるJohns Hopkins University (JHU)のPatrizio Caturegli准教授の研究室に留学しております。当研究室はJHUの巨大組織Department of Pathologyの中のDivision of Immunologyに属しています。そのImmunologyも何人のprincipal investigator (PI)がいるかわからないほど大きな組織ですが、その中でDr. Caturegliら4-5人のPIが集まり、Noel R. Rose教授を筆頭として自己免疫疾患を研究するグループを作っています。下垂体炎、1型糖尿病、橋本病、心筋炎、シェーグレン症候群などが研究対象で、各モデル動物を用いて研究を行っています。私は下垂体炎の自己抗原探索や発症機構に関する研究および慢性甲状腺炎発症機構に関する研究などを進めています。全体の組織は巨大ですが、実際に研究を進めていくメンバーはDr. Caturegliと私を含めたポスドク4人の小グループで、Dr. Caturegliはいつも研究室にいますので研究の相談が気軽にでき、上記グループでのミーティングも毎週あるため多くの研究者からの意見をもらうこともできる大変恵まれた環境で実験させていただいております。

 JHUはU.S. News & World Reportが選ぶAmerica’s best hospitalで21年連続1位を継続している病院で、臨床のみならず研究室と臨床現場との繋がりも強固です。そのため下垂体炎は比較的まれな疾患ですが、Dr. Caturegliが中心となっている下垂体炎研究センターに多くのサンプルが集まってきます。私は留学前に名古屋大学で大磯ユタカ教授、椙村益久先生の御指導の下、自己免疫性下垂体炎、特に漏斗下垂体後葉炎の自己抗原探索研究を行ってきました。こちらに来てJHUのサンプルも活かしたいと考え、今後JHUと名古屋大学との間で下垂体炎の共同研究を行えるようにすることが出来ました。これによって日本で行ってきた漏斗下垂体後葉炎の研究もさらに発展させることが出来ると考えています。

 研究の発展に加え、異文化を体験することが出来るのも海外留学のもう一つの魅力だと感じております。EasterやThanksgiving Dayにボスの家でのパーティーへ招待されたり、休日にメリーランド州の様々な史跡を訪れたりすることは、住んでいないと体験できないことでした。また、Baltimoreは熱狂的なフットボールファンの町(JHU実験動物施設付近の入り口に
「”CAUTION”, Entrance for Ravens Fun ONLY」と冗談で書いてあるくらいです) ですので私もRavensファンになって観戦しました。今シーズンもRavensは好調でポストシーズンまで進み、町も大学内も大変盛り上がって楽しみました。

 このように、異なる研究室で研究の幅を広げることができ、人との交流によって新たなネットワークを作ることができる、そして現地の魅力的な文化も体験できる海外留学の魅力をこの「海外研究室便り」を通じて留学を考えている先生にお伝えできれば幸いです。現在、まだ研究留学半ばではありますが、この経験を活かして今後の研究を発展させていきたいと思います。最後に、本留学の機会を与えて下さっている大磯ユタカ教授に感謝申し上げます。

(写真;ボスと同僚たちとラボにて。
左から2番目がDr. Caturegli、一番右が筆者。)


岩間信太郎:名古屋大学糖尿病・内分泌内科学