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ラット視交叉上核におけるアルギニンバゾプレッシン-改変緑色蛍光タンパク融合遺伝子発現の日内変動と電気生理学的特性の検討

丸山 崇、大久保淳一、吉村充弘、松浦孝紀、石倉 透、上田陽一
産業医科大学 医学部 第1生理学

【目的】
視床下部視交叉上核(SCN)には種々の時計遺伝子が発現し生体リズムの中枢であることが知られている。また、SCNの背内側部にはアルギニンバゾプレッシン(AVP)ニューロンが存在し、SCNからの主要な出力経路の一つであると考えられている。今回我々は、当教室で作出したAVP-改変緑色蛍光タンパク(eGFP)トランスジェニックラットのSCNにおける各種遺伝子変化や電気生理学的特性を観察し、生体リズム研究への応用可能性を検討した。

【方法】
動物は成熟AVP‐eGFP トランスジェニックラットを用いた。AM7:00に明期の開始する12h/12hの明期/暗期サイクルの環境下で飼育し、AM7:00をZeitgeber Time 0 [ZT0]とした。
1) ZT1, 5, 9, 13, 17, 21の各時刻においてIn situ ハイブリダイゼーション法によりSCNにおけるAVP-eGFP mRNA, AVP mRNA, AVP hnRNA, Per1 mRNA, Per2 mRNAの発現を半定量化した。
2) ZT15に600ルクスの光刺激を行い、90分後に脳を採取し、各遺伝子発現の変化を半定量化した。
3) ZT1, 9, 17において、SCNにおけるeGFP蛍光を観察した。
4) 急性単離したAVP-eGFP産生ニューロンをeGFP蛍光により同定し、パッチクランプ法によって電気生理学的特性を検討した。

【結果】
1) SCNにおける各遺伝子発現は1峰性の日内変動を示した。また、AVP mRNAとAVP-eGFP mRNAの変動は同期しており、AVP mRNAと比較してAVP-eGFP mRNAの反応性は過大であった。
2) 光刺激後、AVP-eGFP mRNAおよびAVP hnRNAは減少しており、Per2 mRNAは増加した。
3) eGFP蛍光については明らかな日内変動は観察できなかった。
4) 急性単離したAVP-eGFP産生ニューロンの自発性活動電位を記録することができた。

【考察】
AVP‐eGFPトランスジェニックラットのSCNにおいて各種遺伝子の日内変動は野生型とほぼ同様であり、AVP-eGFP mRNAの変動はAVP遺伝子発現の変動と同様であるが過大な日内変動があり、光刺激に対して反応することが分かった。反応性の大きいAVP-eGFP融合遺伝子発現の変動を観察することで、AVP遺伝子の発現を容易に捉えられると考えられる。また、eGFP蛍光を利用したAVP-eGFP産生ニューロンの同定および生細胞における生理学的実験が可能であることが示唆された。