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第27回バゾプレシン研究会を終えて


会場風景
 バゾプレシンは、神経内分泌学の先駆者の一人であるErnst Scharrer 博士が 1928年に発見した、ペプチドホルモンの元祖ともいうべき存在です。ヒトでは主に抗利尿ホルモンとして作用する一方、中枢では神経伝達物質として行動学的に重要な役割を果たし、また視床下部室傍核由来のバゾプレシンはACTH分泌調節にも関与します。バゾプレシン研究会は、このようなバゾプレシンの多彩な生理機能を明らかにすべく1990年度に創設された歴史ある研究会で、中枢と末梢、基礎と臨床、形態と機能、各々の立場から議論する極めて貴重な機会として、年一回の研究集会が四半世紀以上に亘り継続されて参りました。今回、第27回目の当番世話人を担当し、平成29年1月7日に開催させて頂きましたので御報告申し上げます。

 本年度は会場を東京駅前のホールに移し、また演題数の増加を見込んで午前からの開催と致しました。また一般演題と特別講演(今回は海外招聘講演)に加え、特別シンポジウム、臨床シンポジウムと盛り沢山な内容を企画したところ、例年を大幅に上回る100名以上(海外からの参加者を含む)の研究者・臨床医に御参加頂き、会場はほぼ満席の状況となりました。


 海外招聘演者としてイギリスのブリストル大学(Prof. David Murphy)の研究室からお招きした Greenwood 先生の御講演は、基礎医学の立場から視床下部におけるバゾプレシン遺伝子転写調節の新しい機序を解明した瞠目すべき知見でした。また低Na血症を主題とした臨床シンポジウムは、循環器、腎臓、中枢それぞれの視点から病態生理と合併症を深く掘り下げた内容で、臨床医にとって大変有益であったという声を多数頂きました。さらに一般公募演題も、演題数が過去最大となったのに加え、渇感中枢の本態を解明したNature級のお仕事からクジラの水代謝調節の話題まで内容も幅広く、一般演題とするには勿体ない素晴らしい御仕事が目白押しで、結果的に発表やディスカッションの時間が十分に確保できなくなってしまいました。演者や御参加の皆様にこの場を借りてお詫び申し上げます。

 本研究会は、昨年までは単一企業に御支援頂いておりましたが、本年度より独立した運営形式となり、その移行に伴う事務的な作業のため準備に多大な労力と時間を要しました。また財務基盤の再構築も重要な課題でしたが、セティメディカルラボ、ヤマサ醤油、大塚製薬をはじめ多くの企業・団体の御支援により、なんとか無事開催に漕ぎ着けました。今回の開催に多大な御尽力を賜りました代表世話人の林松彦教授(慶應義塾大学)、世話人の諸先生方、御支援を賜りました神経内分泌学会関係者をはじめとする全ての皆様に、心より御礼申し上げます。最後に、この貴重な研究会が次世代を担う若い研究者により今後ますます発展していきますことを、心より祈念いたします。



 
研究奨励賞授賞者

第27回バゾプレシン研究会当番世話人 
高知大学臨床医学部門 岩舞ラ正