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海外研究室便り No.16

 2014年4月より、米国のメリーランド州にあるアメリカ国立衛生研究所National Institute of Health (NIH)の中にあるNational Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)内、Mark A. Knepper博士のEpithelial Systems Biology laboratoryに留学しております。Knepper先生の研究室は、Aquaporin 2 (AQP2)の制御系に関して研究をしてこられ、近年はSystems Biologyの名の通りプロテオミクスやトランスクリプトームなどの網羅的なデータを収集および解析することに力を入れています。私の研究テーマもその一環として、シグナルをリン酸化プロテオミクスによりリン酸化蛋白の網羅的なデータを集めて、バゾプレッシンからのAQP2のリン酸化シグナルの解析を行っております。ラボ内はStaff scientistが3人、ポスドクが4人と中規模のラボです。ラボ内は気軽にまた活発に研究内容に関して議論が行われます。新たに得られたデータも念入りに皆で検討し、参加者から様々なアイデアが出されていく様を目の当たりにすると、活発なDiscussionの重要性を改めて勉強させていただいております。 NHLBIは大きい研究所で、実験に関しての環境は非常に整っており、少し特殊な実験には研究所内に専門部門が存在します。例えばFlow cytometry core, DNA sequence core, Proteomics coreなどが存在し、予約をすればその実験を行ってもらえ、実験デザインに関してもその施設の専門家と相談してデザインを組むことが出来ます。また、NIHには様々な分野の方の記念講演を拝聴する機会があり、先日AQP1の発見者でノーベル化学賞を受賞されたPeter Agre先生の講演を聞くことが出来ました。
 私はBethesdaという町に住んでおります。治安は比較的よく、近くにはスミソニアン博物館が多くあったり、春にはワシントンの桜まつりがあったりと見るところも多く、地下鉄も発達していますので住みやすい地域です。首都に近いので、NIH内だけでなく、日本の官僚の方や大使館の職員など日本人も多い地域です。研究以外でもさまざまな方と知り合い、来た当初から生活面でも家族共々非常に心支えになりました。気候は寒暖の差が東京よりも大きく、1日で20℃以上変化があることもあります。平均気温を調べると東京より少し寒いくらいなのですが、年によって気温差が激しいそうです。特に去年の冬は28年ぶりの寒さで体感温度が−30℃近くになる日も多く、このような寒さを初めて経験しました。
 海外留学は異なる研究室で経験を積み新しいことを学べることも重要ではありますが、様々な研究室とのつながりを作れることも大きな財産であると思います。残りの期間も精一杯精進してまいりたいと思います。
 最後になりましたが、このような貴重な海外留学の機会を与えてくださいました内田信一教授に心より感謝申し上げます。

(写真:ラボのメンバーとの写真。前列中央左がKnepper博士、その左隣が筆者です。)


磯部清志 (東京医科歯科大学 腎臓内科)